キャリアという他者から与えられた称号に意味はない。私は私の人生を生きると決めた。〜ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社NewsEditor 南 麻理江さん〜




博報堂。

誰でも見聞きしたことがあるであろう大手企業。いや、むしろ大手中の大手。超大企業と言っても過言ではないかもしれません。

その博報堂出身の女性と聞いて、どんなイメージを持ちますか?

・歩いている道が私とは違うもの。一生交わることはない優秀な人なんだろうな。
・そんな大手企業に入れる時点で勝ち組でしょう?羨ましい。
・どうせ悩みなんてないんだろうな。毎日華やかな生活してそうだよね。

さて、どうでしょう?

確かに誰もが名前を知っている大手企業に入れる人というのは、世の中の人口のごく一部でしょう。でも、その大きな企業の中で働く女子たちも、私たちが日常悩むような小さなことで悩み、今後のキャリアについて悩み、そして居酒屋でお酒を飲み、語り、愚痴り、自分の生き方を模索している等身大の女の子でした。

今回のインタビューでは、博報堂からザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(ハフポスト)に転職をし、たった半年で編集長も唸るほどの実績を出し活躍をしている、南麻理江さんにお話しを伺ってきました。

めっちゃかわいい女子でした。
めっちゃスマートな女子でした。
めっちゃ自分の感情に素直でストレートに表現する女子でした。

このインタビューがあなたのキャリアを考える何かきっかけになりますように。

今回インタビューさせていただいた方

ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン株式会社
NewsEditor 南 麻理江さん 「これからの経済」ディレクター。

東京大学文学部※卒業後、新卒で株式会社博報堂へ入社。2017年5月から現職。※文学部行動文化学科社会学専修課程修了

ハフィントンポスト(日本版):
「会話を生み、課題を解決するメディア」「あなたのコトバが、未来をつくる」政治やビジネス、社会情勢などを分かりやすく整理し、各分野の専門家や有識者と個人が意見をやり取りできる、ソーシャルニュース。

組織の中での限界と感じた違和感。違和感の先にあった「私はこういうスタイルの仕事がしたい」という想い


佐藤)南さんは、一見何も問題のなくここまできたのかなと感じているんですが・・博報堂から転職をしたときに、いったいどんな考えや出来事があったんでしょうか?

南さん)(以下敬称略)

私、元々は生活者発想という博報堂の理念に惹かれ、入社したんです。生活者発想、消費者基点で考えよう!そこがすごく自分はフィットしたんですね。

博報堂には合計6年1ヵ月勤務しました。6年もいると、若手社員がやれる仕事という意味では、もう仕事の流れも大体わかるし、良いも悪くも慣れてくる。すごく大きい組織の中で何となくこなせるようになる中、無能感をすごく感じるようになったんです。

「今月の売上」から、「来年の売上・10年後の売上」を、だんだん考えるようになってきて。その中で、自分がこうしたい!って思ったことを、なかなか簡単には変えられない。という経験が何度かあったんです。

佐藤)大企業ならではのスピード感というんですかね。組織が大きくなると、チャレンジしよう!という精神よりも、過去の正解から今の正解を探すみたいな風潮って強くなったりしますよね。

南)そうなんです。本当に正解がない時代に今突入してきていて、2010年代は本当に皆、生みの苦しみを社会全体で体験しているなと思っていて。

皆が本当に次の時代を作るための苦しい時期を過ごしている中で、自分という人間が、どう立ち振る舞うかっていうことを考えたんですね。

慎重に意思決定をして、議論重ねて、たった一つの上申を社長のハンコをもらって、予算を1億円の仕事をするスタイル

失敗してもいいから、予算30万のことを、PDCAを回してトライアンドエラーをもっと積み重ねるスタイル

どっちの働き方がいいのかと考えたときがあって。

私は業態とか業種とか会社とか、知名度よりも、失敗してやり直して、どんどんいろんなことをトライしていくっていう働き方が、私の生き方には合ってるんじゃないかなと思ったんです。

三浦)あの・・・、その発想はいつ頃から持つようになったんですか?何かやりがいを感じたいけれども、それが見つからなくて、何となく表面的に楽しんでしまっているい人が、すごくたくさんいると思うんですね。

でも南さんが、物事をそこまで俯瞰的に見て、次の選択をできるようになったのって、何かきっかけがあったのか。幼少期に何か経験されていたのかとか、何かそういうのってあるんですかね。

ドラマはない。一人一人の言葉が積み重なって、気づいたらここにいた

南)幼少期にドラマチックなことがあるといいんですけど、特になく。笑会ってきた先輩・上司たちの影響は大きいとは思いますね。

印象に残っている言葉は本当にたくさんあります。

「会社でどう振る舞うかじゃない、社会でどう振る舞うか考えろ」
「30代は自分がどう生きるかをちゃんと決める、自分の道を決める準備をする」
「技を身に着けて、それが陳腐化したら、また技を身に付けろ」
「技が一回身につくと、人は思考停止を起こして、すぐにできることだけで解決しようとする。お前が身に着けている技は、一か月で陳腐化すると思った方がいい」
「全ての事柄の抽象度を一個上げて考えろ、お前はすぐ明日の晩御飯を考える」

こうやって、公私ともにお世話になっている上司・先輩が言葉をかけてくれたことで、自分の軸みたいなものができたのかなと。

そんな言葉をたくさん浴びているうちに「息をするように仕事をしたい」。もっと私は失敗して立ち上がって、失敗して立ち上がって・・それを人の何倍速でもやりたいんだって思うようになったんです。

「息をするように仕事をしたい」それを叶えられる場所はどこだろう?


南)自分の軸はこれ(「息をするように仕事をしたい」)かな。と気づいて、それ実現するには今の場所(博報堂)では難しそうだし、じゃあ、どうしようかな・・ってかなり悩みました。

どんな風に働きたいかっていうHowの部分と、何をするかのWhatの部分、これを分けていきました。「What=もっとメディアを良くするような仕事をしたい」と気がつき、メディアの中でコンテンツを作る仕事を、一回経験しようと思って真剣に動き出しました。
そのタイミングで、たまたま私の大学の同級生がハフポストで働いていて、彼との居酒屋トークで、

「わたしは見切り発車でチャレンジして、間違っていたらごめんなさいしながら、一緒に前に進んでいく読者と一緒に、読者とメディアとその他の権力の関係性を探っていくようなメディアが作りたい」

って言ったら、

「試しにうちに編集長に会ってみる?」ってトントンと話が進んだんです。

そこから実際に転職するまではなんだかんだで半年かかりましたが、一大決心して博報堂やめた!というより気づいたら、ここ(ハフポスト)にきてました。

30歳手前で考えた「自分に子供が出来た未来」。考えた結果、導かれた行動指針は「行き当たりばったり」だった


三浦)30歳手前の転職の時に、働くペースを落とすとか、そういうこととか考えなかったですか?子どもを産むかもしれないとか、そういうのを考えて、じゃあ働くペースを落とすとか、女性って起きてもいない未来を心配して、今の行動をセーブする傾向があるじゃないですか?それが南さんにはなかったのかなってところを聞きたいです。

南)私の場合は、いろいろ考えた結果、この「行き当たりばったり」になりました(笑)

子どもがいる女性の先輩に何度か言われた言葉があります。

「子どもができても、本当に大変なのは最初の3年。まあまあ大変なのが最初の10年で、その後、経済的に大変なのが次の10年。」

まあ、いないのに想像するのもあれなんですけど(笑)

子どもがいても、子どもと私は違う人間だし、彼なり彼女なりが、私に依存しなくなってからの方が、私の人生は長い。そう考えた時に、子どもなり家族なりに依存しない、やっぱり私の道がないと死ぬその日までのゴール地点にまっすぐ行けないと思ったんです。

博報堂にいる時は、大手広告代理店勤務女性として仕事をしてました。だけど、器用にバランスを取ることに必死で、私は特に自分の道が後ろにできていないことに気付いちゃったんですよね。

「あなたは何者ですか」って言われた時に、「私は博報堂の社員です」っていう以外の看板がなくて。

もし、子どもができたりとかしたら、自分は弱い人間なので、それを大義名分にしてすがってしまったり「私の道」について考えることをやめてしまう気がして。

それでめっちゃ考えてたら、こんな行き当たりばったりになっちゃったんです(笑)。

三浦)そうやって自分の人生と子供の人生なりパートナーとの人生を分離して考えられる人って、かなり少ないと思うんです。「私の人生、彼、彼女の人生は別だ」っていうところを考の整理ができている女性って、果たしてどれくらいいるんでしょう。

南)わかんないですよ。いざ生まれたら、もうムツゴロウさんみたいな感じで「よしよし」みたいな感じになって、すごい娘、息子離れできないおかんになるかもしんないけど(笑)。

でもわたしいつも思うのは、どんなに愛していてもやっぱり「他人」なんです。夫のことをとても愛してますし、とても大切な、自分よりも自分のことをよくわかってくれている、唯一の人と思っています。

でも、夫が「大変だね、働くって辛いよね」と共感してくれても自分のうじうじしている感情を、彼に移植することはできないですよね。この辛い思いは自分でどうにかするしかない。逆に私の達成感なり喜びっていうのも彼にあげることもできない。

皆、自分の人生は自分でしか生きられないので、そんな準備をしなきゃなって思ってたら、何か博報堂、辞めちゃったんですよね。

「辞めます」といったとき、結局後押ししてくれた博報堂の人たちと私の旦那

出典:HuffPostJapan

佐藤)辞めるとき周りから結構止められなかったですか。

南)なかったですね。「すごい腑に落ちる選択だね」って言われました。「南らしいね」っていうか。

女子社員といえば「パターンAかパターンBかパターンCかパターンDか、そうじゃなかったら「伝説に残るような人」のどれかだよね」というような女性のキャリアのパターンがあまり確立してなかったというのもあると思います。

私が男だったらもうちょっと止められていたかもしれないんですけど。女性だったら出産もあるし、「お前なりの、俺にはわからない、お前なりの考えもあるんだよね」っていう声が多かったです。

佐藤)旦那様というかパートナーはどう見てたんですか。その決断での過程は。

南)夫は、結構いい奴なんですよ笑「君らしいんじゃないですか」っていう感じでした。

ハフポストにいきますと結論を出せるまでは、本当に私、どうやって生きていけばいいんだろうって本当にずっと悩んでて。どう働きたいかって話と、何をして働きたいかっていうHowとWhatがもうぐちゃぐちゃ。

彼には、「どう働きたいのと、何をして働きたいのっていうのを僕に説明して俺のことを説得できないんだったら、社会を説得できないと思うよ」って言われて、確かに・・みたいな。

本当に優秀なコーチングをしてくれた(笑)。根気強いパートナーを持って幸せです。

出典:HuffPostJapan

自分の考えをしっかり持ち、悩みなく進んできたように見えた南さん。

でもこうやって彼女の言葉を聞いていると、自分らしい生き方・働き方を形にしていくためのいくつかのポイントがあるように思います。

例えば、

・今に真剣に向き合いながら、今がベストなのかの疑問も同時に持ち合わせている
・先輩・上司の言葉をインストールし、自分なりに言葉を咀嚼し、行動に移している
・感情を抑えるのではなく発散する場所・相手を作っている

完璧な人なんていない。

自分を客観的に見てくれる存在を近くにおき、そして、孤独に自分と対話する時間を取り、自分を見つけ、一つずつ自らの意思で決断をしていく。

この習慣こそが、誰のものでもない、私らしい生き方・働き方を作り出してくれるのかもしれません。

インタビューの最後に、南さんをハフポストに採用した竹下編集長にもお話しを伺いました。

女性が自由に自分を表現して楽しく働ける職場作りで意識していることは何か?

女性が働きやすい職場は女性の力だけでは作れない。上司であり男性である竹下編集長の組織を作る上での心がけとは!?


佐藤)竹下さんは、南さんが入ってきてどうですか?入ってきて期待以上だった部分と、ちょっと違ったかなっていう部分ってありますか?

竹下)期待以上の部分しかないですね。違った部分はないです。望んでいたメディアの形が、彼女が来て実現しました。南さんが入ったことによって、他の人に対しても相乗効果が生まれている。複眼的になってきましたね。

南)・・・もうこれで3日飯食えます。笑

佐藤)なかなかそんなストレートに言えないですよね。この子すごいなと思っても、上司がこんなに褒めないし言わないですよね。

南)開けっ広げなんですよね、私たちは多分。でもそれが強いと思っちゃってるかも。ちょっとよくないかな。でも開けっ広げじゃないともうダメかも。信頼されないと思っているんですよね。

開けっ広げな人間じゃなかったんですけどね、なんでこんな風になっちゃったんだろう(笑)。くよくよしたりとか、この転職を巡る冒険は大きかったかもしれないです。

三浦)南さんのその俯瞰的に見る視点って、どこで養われたんですか。

私も俯瞰的に普段から見るように癖づけていますが。消費者は何を考えていて、仕掛ける側は何を考えていて、どこでこれが交差するのかとか。でも、ずっと消費者のままで、ビジネスをしてしまう人もいて。

何をどう伝えたらこの人はここの視点だけじゃなくて、こっちを見れるんだろうと思うんです。何か言っても、何かなかなか変わらないんですよ。そこがボトルネックなのに。

南)うーん・・昔からそうだったかも・・

佐藤)竹下さんから見られていて、ここがっていうのってありますか。

竹下)彼女は俯瞰しているわけじゃなくて、気を散らしているんだと思います。上から見ているっていうよりは何か、ずっとぐるぐる見回している感じですかね。

一般的には、集中することがいいこととされていますよね。

でも今音が鳴っているのにずっと集中して、他でものすごいいいことが起きているのにちゃんと振り向いてもくれないってのはまずい。真面目は真面目だけど、危ないです。

もしここでたとえば、誰かがすごい面白いことを言っていて、こっちにイノベーションがあったらこっちに向いていてほしいんですよね。

だから、気が散っている人がいた方が私は安心なんです。

佐藤)最後に、個人的にひとつ質問いいですか?会社の中というか、仕事をしていく上で、自分の感情をつぶさないとといけないなと個人的には思っているんです。

でも、竹下さんや南さん、このハフポストさんは、その自分の感情の部分を保ちながら、自由に軽快に仕事をしているような気がして。なぜそれができるのかなとか、本人は何に気を付けているのかなをちょっと聞きたいです。

南)私もよく、「いやもうそれは心を殺してやっているんで」と思いながら、いろんな仕事をやってきたんですけど。よく考えたらそれって、その方が合理的なのはなぜなんだろうっていう所まで考えたことなかったですね。

今の自分に求められていることとかこの会社で実現したいこととか、ハフポストが社会の中で、どういう立ち位置でやっていきたいかっていうのを考えた時に、自分の感情を潰すことによって得られる合理性は、全くプラスじゃないどころか、マイナスだなと思っています。

感情を潰さない、柔らかい部分を持ち続けるっていうことが結果すごくいい。

佐藤)竹下さんは、そういう環境は意図的に作っているんですか。

竹下)かなり意識していますよね。何か制度がそうっていうよりは、雰囲気ですかね。マウンティングしない。

何か意見を、たとえばメンバーが言ったら、ちょっと違うなと思うんですけど、そこであんまり争わなかったりします「ちょっとこういう風にやりたい」って言ったら、違うなと思うけど「いいよ」とか言ったりします。

三浦)そこまでフラットに見れるってすごくないですか。知識・経験が付いたり、役職に付いたりすると、「前、こんなことがあった」とか「俺のときはこうだった」とか、良かれと思って部下に最初に答えを与えちゃうことも多いような気がするんですよね。

南)竹下の場合は、知識、経験だけを拠り所にしていないからだと思います、

たとえば編集長であることとか、メディア業界にいるのが10何年だっていうことを全然、拠り所にしていない感じがします、見ていると。武勇伝は言わないですし。

拠り所は、それはキャリアっていう他者から与えらた称号ではなくて、自分の中に築かれてくるものであるべきかなと思います。

べきっていうか、私はそうだし、多分、編集長もそうなのかなと思うし、そんな人が増えてもいいのかな。増えたらいいなみたいな。そんな風に思っています。

まとめ

優しい社会にしたい、幸せの総量を増やしたい。こんな言葉をインタビュー中に南さんが話してくれました。

私自身、自分が事業を始めてからは、こんなことがやりたい!こんな風に社会の役に立ちたい!ということを臆せず言うようになったし、それを言い合える人たちが周りにたくさんいるけれど、今、あなたの周りにあなたのやりたいことを真剣に聞き、笑わずに「叶うよ!」と言ってくれる人はどれだけいますか?

さらりと夢や目標を語れる職場。そんな環境を竹下編集長をはじめ社員の皆さんで作っていることが、このハフポストさんの強さであり、魅力なのかもしれません。

インタビュー中、上司の言葉に突っ込みを入れる南さん。そして、その言葉に思わず顔が赤くなる竹下さん。なんとも微笑ましい上司部下のやりとりも楽しませていただいたインタビューでした。

キャリアという他者から与えられた称号に意味はない。
さて、あなたはどんな肩書きで、この人生を生きていきますか?

▷竹下編集長と南NewsEdtorが発信する「ハフポスト」はこちらから。

インタビュアー:佐藤史子、三浦綾子
記事編集:佐藤史子、三浦綾子










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