「友達の結婚報告って嬉しいんだけどさ、
今月3人だよ!!
しかも3件が11月と12月の挙式。披露宴と二次会入れたら、
私合計15万円飛ぶんだけど・・・。
完全ご祝儀貧乏だよ。崇史、男子の29歳もこんな感じだった?」
8月下旬の土曜日。
昼下がりの13時。
大崎ハルナは、
付き合って2年になる彼氏の川上崇史と
久々に週末デートをしながら、
先週水曜日の出来事を
声荒げに崇史に報告をしていた。
![](http://jyoshitoku.com/wp-content/uploads/2017/08/restaurant-240444_640.jpg)
崇史はハルナの5歳上の34歳。
IT系企業に勤めているハルナは、
自社で開発しているサービスの提案で、
崇史が勤める専門商社に仕事で訪問したのが、
崇史と知り合ったきっかけだった。
マーケティング部で課長職をしていた崇史。
最初はお取引先の関係で
やりとりをしていたんだけれど、
仕事に対するスタンスや、
こちらを思いやって仕事を進めてくれる人間性、
そして、
笑った時の目尻のシワ。
ある日の打ち合わせの時に、
「大崎さんって、
なんかツンとしてるけど、
可愛いね」
って言われて、
笑って目尻のシワの見せた時に、
ハルナは崇史に落ちた。
![](http://jyoshitoku.com/wp-content/uploads/2017/08/converse-2521534_640.jpg)
それから2年。
ハルナは、
崇史の会社の担当は離れ、
今は取引先の関係を気にすることなく、
心置きなく恋人同士の関係を続けている。
「俺の時は、まぁ男ってのもあるけど、
29歳で結婚ラッシュ!ってことはなかったよ。ただ、同級生と付き合ってて、
彼女が29歳ってやつはやっぱり、
29歳で結婚してるやつが多かったかなぁ。え?ハルナ、
俺も結婚覚悟したほうがいい?」
「何、その言い方。
崇史は私と結婚するのが
嫌ってこと??ひどーい!!」
「そんなこと言ってないだろ。
そもそも、
ハルナがご祝儀が大変!って話だったのに、何で俺がハルナと
結婚したくないって話になるんだよ。お前、そういうとこ、
普段しっかりしてるのに、
女子っぽいよな。」
そう言って、
崇史は私のセミロングで、
ちょっとだけ茶色く染めた髪を、
くしゃくしゃにしながら撫でる。
ハルナはその崇史の仕草が好きだ。
あー、
愛されているなぁと、
すごく実感する。
幸せな昼下がり。
昼から少しワインも飲んだこともあって、ほろ酔いなのか、
ハルナはいつも以上に崇史の仕草が嬉しかった。
![](http://jyoshitoku.com/wp-content/uploads/2017/08/woman-506120_640.jpg)
29歳。
結婚願望はあるか?と聞かれると、ある。
けれど、
29歳に結婚したいか?と聞かれると、
まだもう少し自由でいたい、もう少し仕事を楽しみたいと、
ハルナは率直に思っている。
でも、
もしも、
今付き合っている崇史に
結婚して欲しいと言われたらどうだろう?
「私はイエスって言うのかな?
もう少し待って欲しいって言うのかな?
もしまだ結婚しないと言うのなら、
私は菜々子とみなみと何が違うんだろう?」
ハルナには、
自分の心の声に
答えが出せなかった。
オンナ、29歳。
結婚という選択が、
オンナ同士が交われない、
二つの道に分けていく。
次の連載に続く。
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