29歳の憂鬱〜東京:三軒茶屋在住、OL大崎ハルナの話〜vol.09




「ハルナ、その仕事受けたいの?」

崇史が質問してきた。

「うん、折角のチャンスだし、やってみたいなって思ってる」

廣田部長から、
来年年明けからの組織編成で、
マネージャーにならないか?と誘いを受けたハルナ。

週明けまでに
廣田部長に返事をする予定にしていて、
恋人の崇史にいち早く相談をして、

ハルナの中では
頑張れよ!と全力で応援してくれるのが、
今までの崇史のイメージだったのに、

今回は何故か崇史の雰囲気が違った・・・。

マネージャーをやってみたいと答えたハルナの声のあと、
ほんの一瞬だったが沈黙の時間があった。

(え?崇史は何て言葉を発するんだろう・・・)

「ハルナ、俺さ、
前から海外に行きたいって言ってたじゃん?」

「うん、そうだったね」

「実はこの前の中国出張、
急遽決まったのに理由があってさ。
俺、海外赴任できるチャンスが巡ってきたんだよね。

今回の出張で出した成果も結構いい感じで、
来年の人事異動で海外赴任対象者に推薦するって、
上司から言われてさ。

だから、ごめん。
ハルナの話しに素直に喜べなかった。」

「崇史、そうだったんだ。
え?それ行くとしたらいつから?」

「うん、多分、
来年の4月だと思う。」

「場所は?中国?」

「上海か、
シンガポールかも。」

(・・・・・・・・・・・)

(・・・・・・・・・・・)

崇史が海外に行きたいという話しは、
ハルナが崇史と付き合い始めた当初から聞いていた。

目をキラキラさせながら、
自分の仕事の夢について語っていて、
なんて素直でいい人なんだろうと、

そんな崇史の姿に惹かれたというのも、
ハルナの中には正直あった。

だから、
いつか叶って欲しいと
確かに思っていたけれど、

神様はなんで、
こういうタイミングで
チャンスを手渡してくれるんだろう?


ハルナにとっても
思いがけないチャンスが巡ってきて、

崇史に至っては、
ずっと思い描いていた夢が
叶う目前まで来ているというのに。

なんでお互いが掴んだチャンスを
お互いが喜ぶということが出来ずに、
今私たちは沈黙の中にいるんだろう・・・。

「ハルナ、あのさ、
海外赴任が決まったら、
就いてくるって選択肢ある?

俺は、海外赴任決まったら、
ハルナにその・・・言おうと思ってたんだよね。」

(え?言うって、プロポーズ??)

あぁ、神様は
やっぱり不公平だ。

なんで今のタイミングなの。

私が結婚のことについて、
うだうだと悩んでいたから??

あつ美や、
大学時代の同級生みたいに、
さらりと結婚する選択肢を最優先にしたら、
きっと今頃こんな気まずい空気にはなってないよね。

オンナが彼氏も仕事も
全て欲しいと思ったらいけないんだろうか?

「崇史、うん、おめでとう。

なんか、ごめん。
私も素直に喜んであげられなくて。

崇史の中ではさ、
私がこのまま日本で働いて、
そのままの関係でいるって、
有りなのかなぁ。どうなんだろう。」

「うん、正直、
一緒に来てくれたらいいなと思ってる。
でもハルナの気持ちもあるからね。」

「うん。そっか。」

「あ、俺、
今日は帰るね。
家まで送れないけど、
ハルナ帰り大丈夫か?」

「うん、ありがとう、大丈夫だよ。」

「すいません、お会計お願いします」

(次の連載へ続く)

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webコンサルタント。13年半の会社員生活を経て独立し、現在は個人・法人向けにWEB集客、メディア運営のアドバイスにて事業を展開。横浜・みなとみらいエリアにマンションを購入し、大好きな土地でのライフスタイルを実現している。