「ハルナ、その仕事受けたいの?」
崇史が質問してきた。
「うん、折角のチャンスだし、やってみたいなって思ってる」
廣田部長から、
来年年明けからの組織編成で、
マネージャーにならないか?と誘いを受けたハルナ。
週明けまでに
廣田部長に返事をする予定にしていて、
恋人の崇史にいち早く相談をして、
ハルナの中では
頑張れよ!と全力で応援してくれるのが、
今までの崇史のイメージだったのに、
今回は何故か崇史の雰囲気が違った・・・。
![](http://jyoshitoku.com/wp-content/uploads/2017/10/ryukyu-glass-738800_640.jpg)
マネージャーをやってみたいと答えたハルナの声のあと、
ほんの一瞬だったが沈黙の時間があった。
(え?崇史は何て言葉を発するんだろう・・・)
「ハルナ、俺さ、
前から海外に行きたいって言ってたじゃん?」
「うん、そうだったね」
「実はこの前の中国出張、
急遽決まったのに理由があってさ。
俺、海外赴任できるチャンスが巡ってきたんだよね。
今回の出張で出した成果も結構いい感じで、
来年の人事異動で海外赴任対象者に推薦するって、
上司から言われてさ。
だから、ごめん。
ハルナの話しに素直に喜べなかった。」
「崇史、そうだったんだ。
え?それ行くとしたらいつから?」
「うん、多分、
来年の4月だと思う。」
「場所は?中国?」
「上海か、
シンガポールかも。」
(・・・・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・・・)
崇史が海外に行きたいという話しは、
ハルナが崇史と付き合い始めた当初から聞いていた。
目をキラキラさせながら、
自分の仕事の夢について語っていて、
なんて素直でいい人なんだろうと、
そんな崇史の姿に惹かれたというのも、
ハルナの中には正直あった。
だから、
いつか叶って欲しいと
確かに思っていたけれど、
神様はなんで、
こういうタイミングで
チャンスを手渡してくれるんだろう?
ハルナにとっても
思いがけないチャンスが巡ってきて、
崇史に至っては、
ずっと思い描いていた夢が
叶う目前まで来ているというのに。
なんでお互いが掴んだチャンスを
お互いが喜ぶということが出来ずに、
今私たちは沈黙の中にいるんだろう・・・。
「ハルナ、あのさ、
海外赴任が決まったら、
就いてくるって選択肢ある?
俺は、海外赴任決まったら、
ハルナにその・・・言おうと思ってたんだよね。」
(え?言うって、プロポーズ??)
あぁ、神様は
やっぱり不公平だ。
なんで今のタイミングなの。
私が結婚のことについて、
うだうだと悩んでいたから??
あつ美や、
大学時代の同級生みたいに、
さらりと結婚する選択肢を最優先にしたら、
きっと今頃こんな気まずい空気にはなってないよね。
オンナが彼氏も仕事も
全て欲しいと思ったらいけないんだろうか?
![](http://jyoshitoku.com/wp-content/uploads/2017/10/night-2300576_640.jpg)
「崇史、うん、おめでとう。
なんか、ごめん。
私も素直に喜んであげられなくて。
崇史の中ではさ、
私がこのまま日本で働いて、
そのままの関係でいるって、
有りなのかなぁ。どうなんだろう。」
「うん、正直、
一緒に来てくれたらいいなと思ってる。
でもハルナの気持ちもあるからね。」
「うん。そっか。」
「あ、俺、
今日は帰るね。
家まで送れないけど、
ハルナ帰り大丈夫か?」
「うん、ありがとう、大丈夫だよ。」
「すいません、お会計お願いします」
(次の連載へ続く)
【関連記事】
コメントを残す